六甲 夏の思い出

2か月ブログを更新していなかった.土日は全く時間が取れず仕事をしていた.しかし,時間がある夜半須賀敦子の文庫本を読んでいた.彼女はイタリア,ミラノ滞在中にイタリア人ペツピーノと結婚,日本文学,イタリア文学の双方向の翻訳を続け,60代以降に「ミラノ霧の風景」,「コルシア書店の仲間たち」などエッセーの名品を数多く書いている.西宮,芦屋で育ち,宝塚のミッションスクールを経て東京に向かう.妹の先輩なのだ.森鴎外を愛した彼女の父は強引で横暴な人だったようだ.父への反抗が彼女の存在の証しの時期があった.自分の父を思い出す.父は複雑な家庭に生まれ,叔母に育てられた.しかし,幸い勉強は出来たため旧制高校から大学に進学.戦争末期に海軍に入隊.鹿児島の鹿屋基地で敗戦を迎える.父にとって家族ほど大切なものはなかったのだろう.自分にとっても父の存在は大きく重かったと思う.6歳ごろだろうか,父に連れられ夏の1日芦屋川の堰堤で妹と3人で水遊びをしたことを覚えている.堰堤の清流にはオイカワの群れが泳ぎ,頭上の木々から夏の陽光がもれ,山地性のミンミンゼミの鳴き声が聞こえていた.オイカワの群れが水面を敏捷に泳ぐ姿は今も記憶に残っている.その堰堤は今も残り,当時の景観を思い出すことができる.