感染症とニュートン

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 2月末から始まったコロナ禍による「籠の鳥状態」が取り合えず終わろうとしている.この3か月は一体何だったんだろうと思う.この際感染症について少し学ぼうと思い,のこのこ開店しているジュンク堂をさがし,岩波新書山本太郎著「感染症と文明」を購入.ペスト,麻疹など感染症が,如何に人類に影響を与えたか進化生物学的な視点で記述している.興味深い.感染症と人類について考える際に,非常に分かりやすい著作だと思う.面白いのはイギリスの物理学者ニュートンの逸話だ.先日の朝日新聞のコラムにも書かれていたが,当時ペストが大流行したイギリスで,ケンブリッジ大学の学生だったニュートンは,感染を避けるため故郷のイングランド東部の寒村ウールスソープに疎開し,そこで毎日ぼんやりと過ごすうちに,万有引力の法則,微積分法などの基礎的な発見をしたらしい.感染症から逃げて,彼は人とは交流はできないが,ゆっくりと思索し,文献を読んでいたのだろう.その時彼は幸い奨学金も貰っていたようだ.後年偉大な科学者となったニュートンは,ロバートフックなど科学者を攻撃して,王立協会を支配しようと問題のある人物らしいが,面白い逸話だと思う.

自分のことを振り返ると,この3か月ほど,この数年六甲山麓で観察した花に集まる訪花昆虫のデータをどう整理するかを考えていた.イギリスのOllertonらのかなり論文も読めたし,少し先が見えてきた感じはする.幸い感染は免れ,セミリタイアの身分で,食べて行くことは何とかなる.飲食店などを経営する自営業の方に比べて幸運だったと思う.

手元にあった感染症に関わる本を探すと長谷川真理子著「ヒトはなぜ病気になるのか」,

ジャレット・ダアモンド著「銃・病原菌・鉄」があった.我々人類が文明を形成した時から,感染症との戦いを続けてきたことがよく分かる.人類が未開の森林を開発し,平野で農耕を開始し,定住し家畜を利用した.その時動物と共生していた細菌,ウイルスと人類が遭遇し,免疫を持たない人類は生存を脅かされていたのだ.山本によるとSARSウイルスは消滅したらしい.今人類以外の動物とどこかでひっそりと共生しているのだろうか.今回のコロナウイルスは,新しい宿主のヒトに巧みに適応したウイルスなのかもしれない.毒性が強すぎて宿主が絶滅するのは,ウイルスにとって適応的ではない.新しいコロナウイルスは感染収束後も,インフルエンザウイルス同様ヒト社会に巧みに生き残るのだろう.

写真は庭のフェンスのヤマブドウの開花の様子.今年は開花数が多く,訪花昆虫もよく目に付く.スズメバチ,ハキリバチなどを目撃した.