三浦しをん  「愛なき世界」について    

 三浦しをん さんの「愛なき世界」(中央公論新社)を夏前に読んでみた.簡単な紹介を頼まれ,ネット上には公開されtていないので,少し修正して公開します.三浦さんの本は,前から気になっていて,読んでみると面白かったです.

 東京本郷にあるT大理学部大学院で植物(シロイヌナズナ)を愛し,その葉の形態を決定する遺伝子について研究に没頭する理系女子,本村と大学近くの洋食屋のコック藤丸の彼女への片思いをほのぼのと描く.彼女の研究室のミステリアスな指導教官松田も登場し,謎解きの面白さもあり,料理のレシピについても丁寧に語られる.タイトルの重さとは異なり,一気に最後まで読めてしまう.文系の作者が東大理学部塚谷博士(植物の遺伝子の専門家)に入念に取材し,理系研究室の様子もよく分かり,分子レベルの生物学の解説書としても読める,日本植物学会の特別賞を受賞した作品.文学好き以外に理系大学院進学希望者にもお薦めの一冊か.