初冬の京都とグローバル化する社会

12月6日土曜,最後の黄葉を見るために昼前に京都に向かう.河原町駅から四条通を東に向かい,八坂神社から高台寺清水寺へ歩く.晴天の穏やかな初冬の午後だ.学生時代,円山公園に行ったことはあっても清水寺に行ったことはない.高台寺から清水へ向かう道はすごい観光客で賑わい,土産物屋が並ぶ狭い道を歩くのも大変である.土産物屋を覗き,裏通りの老夫婦が営む喫茶店でコーヒーを飲む.円安のためか海外からの旅行客も多い.歩きながら周辺の言葉を聞いていると中国以外に韓国からの旅行者が多いようだ.おそらく京都ではこのコースは観光の定番だろう.清水寺周辺の山の木々は赤,黄色の美しい景観を示している.しかし,寺の改修工事のためブルーシートを張り,良い写真は撮れない.諦めて坂道を下り,東山通から四条通を西に歩き,柳番場通,高倉通,冨小路あたりの南北の通りにある居酒屋を探す.どの店も満員だ.どうやら大安で結婚式の2次会のようだ.そこで近くにある学生時代,お世話になった富山の魚を売り物にするト一食堂の1階に入る.学生時代とあまり雰囲気は変わっていない.バイト代が入り,安価においしい魚やすき焼きを食べるときはこの店に来た.アルバイトの金髪の若い女性が日本語で注文を聞きに来たのに少し驚く.子供連れの欧米の外国人観光客も来ている.京都の和食の店でもグローバル化が進む.
 1990年頃,東西の冷戦構造が崩壊し,アメリカの世界1極支配が続いた.一方,イスラム,中国,インド,ブラジルなどの経済,軍事面の台頭は,アメリカの支配構造を大きく揺るがせている.またヨーロッパはEUを結成することで,第1,2次世界大戦の惨禍を克服しようとした.しかし,経済のグローバル化は,企業のグローバル化,移民の増加,あるいは西欧由来の近代思想を否定するイスラム諸国,独自の社会主義経済を目指す中国など,根底的は対立構造を抱えてしまったようだ.国民国家の解体が進んでいる.
グローバル企業は,国家への納税,社員の雇用の安定を嫌う.一方でEU諸国もイスラム系移民排斥運動,ネオナチの台頭,日本でも嫌韓ヘイトスピーチの激化,日中,日韓の対立,敵を意図的につくって叩き人気を集めるポピュリズム政治(日本の橋下,安倍,フランスのサルコジなど)の台頭,日本の社会も西欧由来の近代思想(人権思想)を否定しようという潮流が明らかになってきたのかなと思う.かつての戦前反近代を目指した京都学派などを思い出す.
先進国の製造業は人件費の安い中国,東南アジアそして更なる西への移転した.これらは必然的に先進国の仕事内容の激変をもたらし,非正規,派遣社員の増加し,雇用の40%は非正規となったと言われる.多くの仕事はマニュアル化され「誰でもできる仕事」を安い賃金で経営者は労働者を使い,所得再分配されない.内部留保か投資家,経営者に流れる.所得格差は大きくなる.雇用の確保を企業の大きな意義としたかつての日本の社会は大きく変わった.取りあえずリストラにより人件費を削り,利潤を増やす.しかし,人口減を伴い需要は増加しない.戦後最悪の特定秘密保護法も制定された.腹立たしいことも多いが,前を見て進むしかない.写真は京都,清水付近.