映画 グラン・トリノ Gran Torino

グラン・トリノ」は1970年代のフォードの車名である.主演,監督はクリント・イーストウッド.主役の老人コワルスキーは,かつてフォードに勤め,アメリカ中部のアジア系の住民が多い地方都市に住む.古き良きアメリカを愛し,一方で朝鮮戦争で戦い,心に傷をもつ男でもある.アメリカ映画界ではおそらく保守派に属するイーストウッドらしい映画だとはじめは思った.彼は大切にしている車「グラン・トリノ」を盗もうとする近所のアジア系(東南アジアのモン族という少数民族)のチンピラグループの一人の少年と知り合い,その少年との交流が始まる.アメリカの保守派にとってアジア系の少数民族の存在は疎ましいものだろう.しかし,孤独な老人はその少年との交流を大切にする.そしてその少年の姉がチンピラグループに暴行を受ける.老人は一人でチンピラグループに立ち向かい,復讐を果たそうとする・・・.まるで荒野のガンマンやダーテイ・ハリーのような最後であるが,結末は違う.単純な展開であれば,少数民族に対する排外的な映画になってしまう.モン族はベトナム戦争をきっかけにアメリカに移住してきた,という背景もあるのだろう.現代のアメリカ社会が抱える問題をイーストウッドはよく考えている.クリント・イーストウッドに対する自分の見方を変える映画だった。

今回は適当な水彩画がないのでなしです。