六甲山 戦前

 最近死んだ父の学生時代のアルバムに、旧制高校生だった父たちが、甲山周辺を散策しているものがあった。山の位置から、夙川の上流、現在の西宮市柏堂あたりの高原状の地形ではないかと思う。時代は昭和15年ごろだろうか。まだ暑さの残る9月である。当時その付近には大谷氏の広大な別荘があり、高原状の台地にはいくつか湧水による池があった。そこに自分が学生時代まで、山を上がって泳ぎに行ったものである。近くに住むドイツ人の少女たちも泳ぎに来ていた。40年ほど前のことである。大谷別荘も今は県立高校に変わり、池も埋め立てられ、小学校や宅地に変わってしまった。2.26事件から戦争へと進んで行き、父たちも昭和18年に学徒動員で海軍に入隊。特攻隊入り、鹿児島で終戦を迎える。戦争前のつかの間ののどかな一日だったのだろう。