茨木 のり子 一本の茎の上に

 先日三宮のジュンク堂で、ちくま文庫「一本の茎の上に」を見つけて購入。この文庫は70年代から90年代までのエッセイが収録されている。どの文も大らかでのびのびしていて心地よい。ドロドロしたルサンチマンや孤独も感じない、読んでいてほっとする。表紙、挿絵も良い。学生時代、京都市高野に住む女子高生の家庭教師で、確か物理と数学を教えていた。その母親が読書家で、よく河原町の確か三月書房で多量のハードカバーの文学書や精神分析学の本を買っていて、居間の書棚に並んでいた。かなり茨木のり子の本もあったと思う。今思うと同世代なのだろう。その影響もあるのか彼女の詩集もその頃少し読んでいたことがあった。この母親にはいろいろお世話になったと今も感謝している。まだ、貧乏学生を大切にする京都の良き時代の最後だったのだろう。探すとまだ手元に思潮社版現代詩文庫「茨木のり子詩集」が残っていた。エンピツで線が記されたりしている。若い頃の詩は今読んでみると鋭い言葉の「勇敢な少女」という感じか。きっと素敵な女性だったのだろう。現代詩文庫には同人誌「櫂」に関わる人間模様を描いている「櫂」小史がある。彼女が初期に「詩学」に投稿していたころのメンバーには、北大で初期マルクスを教えていた哲学者花崎皋平さんの名前もある。驚く。鮎川は彼女に激励のはがきを書いていた。自分の生まれる前の随分昔の話だ。震災後古い本はかなり捨てたが、彼女の詩集は幸運にも残っていた。今読んで、どちらも良い本だ。良い本は、時間を経ても良い。

スケッチは、少しでも爽やかのものを探し「初夏の上高地」。ケショウヤナギ、カラマツの新緑が美しい季節だった。