映画 メグ・ライアン から悪役を考える

 テレビでメグライアン主演「私の母のボーイフレンド」(2008)を観る。原題は「My Mom's New Boyfriend」。監督ジョージ・ギャロ、共演 アントニオ・バンデラス(スペイン出身)、トム・ハンクスの息子 コリン・ハンクス。邦題があまりにもと思ったが、原題もそのまま。しかし、さすがラブ・コメの女王 メグ・ライアンとは思う。50才に近いメグは魅力的。内容も退屈しない展開。メグは夫に捨てられ、自暴自棄になり「デブ」になるが再起し、金と美貌を取り戻す。息子コリンはFBIの捜査官。コリンの婚約者セルマ・ブレアも捜査官。やたら男にもてる母を息子は心配する。そこへ強盗団の一人バンデラスがあらわれ、二人は恋に落ちる。その間、映画「卒業」の「ミセス ロビンソン」の曲が流れ、オードリー・ヘップバーン、青い眼のピーター・オトール共演の「おしゃれ泥棒」と全く同じ手口で、美術館の彫像を強盗団は盗もうとする。製作者の60年代の映画への思い入れを感じる。結末は書かない。
 
 強盗団は、多国籍グループでアルバニア系も関係するようだ。映画の中にもアルバニアの隠れ家風レストランが出てくる。バンデラスはその店の料理を「何でもうまい」とほめる。最近観たデンゼル・ワシントンジョン・トラボルタ共演の「サブウエイ 123」原題(The talking of Pelham 123)は確か30年前のリメイクだったと思う。この作品でもアルバニア語とアルバニア人が出てくる。地下鉄をジャックしたトラタボルタが、捜査陣を撹乱するためアルバニア語を利用する(確か政治家ホッジャの演説の録音を流す)。今のアメリカにおけるアルバニア人の位置をあらわしているのだろうかと考えてしまった。アルバニアは今はEU加盟を申請中のアドリア海に近い小国。かつて、東側の社会主義国家。東欧では珍しい毛沢東派の政権でほぼ鎖国状態だった。ホッジャはそのときの指導者。その後ソ連邦崩壊、ユーゴ内戦で市場化され、その過程で、多数の難民がアメリカに移住。今約20万人がアメリカに居住。歴史を調べるとトルコ、イタリアの支配があり、そして社会主義化。そして内戦。宗教もイスラムが主流で、キリスト教ギリシャ正教もある。かなり複雑な歴史をもつ国だ。

 アメリカ映画の悪役はかつてはネイテイブアメリカン(インデアイン)、そしてロシア人、アラブ人が引き受けたと思う。日本の勧善懲悪ものなら悪代官を使えば何の問題もない。先日テレビで放映していたシュワルネッガー主演の「トゥルーライズ」(1994)は、アラブ人を悪役にした型どおりの映画。今ならつくれないだろう。今の複雑な国際情勢で映画も迂闊なことはできない。特に多民族国家アメリカではそうだろう。残るは国家犯罪かアングロサクソンの白人の犯罪を描くしかない。微妙な役割に少数派のアルバニア人が使われるのかと考えてしまう。

訂正です。 昨日TVでデンゼル・ワシントン主演「Inside Man」を観た。アルバニア語のホツジャの演説の録音を犯人グループが利用したのは「Inside Man」でした。