映画 「The Ghost Writer」 ロマン・ポランスキー

映画を観るとき,その選択理由は,1.映画そのものが面白い,2.出演俳優の魅力,3.誰が監督したか, だろうか.この映画は明らかに3であり,ポランスキー(Roman Polanski)が監督である故に映画館で観たと思う.ポランスキーは,ポーランド映画「水の中のナイフKnife in the Water」(1962)で登場し,アメリカに亡命,数々のスキャンダルを引き起こし,アメリカを脱出.多くの作品を製作し,最近では「戦場のピアニスト」でアカデミー監督賞を受賞している.最も好きな彼の作品はジャック・ニコルソン主演の「China Town」だろうか.L.A.を舞台に,チャンドラー原作のマーローを思い起こす虚無的な探偵をジャック・ニコルソンが好演していた.ポランスキーはL.A.の中華街にどのような思いを寄せたのか想像してしまう.
 彼は1933年パリに生まれたポーランドユダヤ人(アスケナージュ)であり,両親と共にポーランドに戻り,幸いホロコーストで殺されることはなかった.戦後映画製作を学び,「水の中のナイフ 」で世界的に注目をあびる.自分の学生時代にポーランド映画特集の映画会で観たことはあるが今印象は思い出せない.
 10月の連休の2日目,神戸三宮シネ・リーブルは年配の客が結構入っていた.主演はユアン・マクレガー(Ewan McGregor).彼がイギリスの元首相の自伝をゴーストライターとして執筆することになり,ミステリアスな事件に巻き込まれてゆく.元首相はピアース・ブロスナンPierce Brosnan).誰が見ても彼は元首相ブレアを思い出す設定になっている.ゴーストライターは架空の,おそらく北米東海岸と設定した荒涼とした冬の孤島に軟禁されながら短期間の原稿完成を求められる.その島には元首相の仕事場があり,元首相の妻,彼の秘書がいる.彼は様々な不可解な出来事に気付き,元首相とその妻の恐るべき過去を知ってしまう.全編に漂う不可思議な雰囲気は「ナインス・ゲート The Ninth Gate」を思い起こす.結末は書かない.舞台はロンドンで始まり,そしてロンドンで終わる.ポランスキーに特に思い入れがなければ退屈な映画かもしれないが,70歳を超える彼の能力の高さには感心する.撮影場所はベルリン,バルト海アメリカ(監督不在,おそらく入国できないのだろう)などで行われた.その後ポランスキーは2009年スイスで逮捕され,2010年ベルリン映画祭に参加できなかった.スケッチはパリオペラ座付近,2005年夏.