映画 4分間のピアニストFour Minutes

 帰宅時に駅前の小さなレンタルビデオ屋で旧作3本借りて時間のある時に観る。時々掘り出し物がある。最近良かったのはこのドイツ映画だろうか。製作は2006年。監督Chris Kraus、主演の刑務所に服役中の女性Jenny Von Loeben (Hannnah Herzsprung)と刑務所でピアノを教える Traude Krueger (Monica Bleibtreu)の交流を描く。Jennyは子供時代から「モーツアルト」のような天才的ピアニストとして父に期待されて育てられるが、父との関係が崩壊し、犯罪を犯し、刑務所に服役中である。Kruegerもかつてベルリンフィルを指揮するおそらくフルトベングラーに将来を嘱望されるピアニストであった。しかし、第二次世界大戦中は看護師として勤務し、社会主義者としてナチスに抵抗していたようだ。2人の複雑な過去が描かれる。ピアノ教師Kruegerは刑務所でJennyの才能を見抜き、彼女を育て、コンクールで優勝を狙う。しかし、JennyはKruegerの指導に従わない。自分の好きな黒人音楽(“negro-music”と英語版wikiに書かれている)を演奏する。ラストは2人で刑務所を脱出し、コンクールのステージに立つ。そのとき、ホールは警察、刑務官に包囲される中で、Jennyは有名なシューマンのピアノ協奏曲イ短調作品54をソロで弾く。途中から彼女の好きな黒人音楽(“negro-music”)を大胆に演奏し、聴衆のブラボーの歓声で終わる。希望をかすかに感じる終わり方である。
 主演のJennyを演ずるHerzsprungは、オーデイションでピアノは弾けないので、「ねこふんじゃった」を弾いたという。特訓の末、本番のホールの演奏は吹き替えなしのようだ。とにかく体当たり演技である。一方老女(80歳か)Kruegerを演ずるBleibtreuの演技も存在感がある。実年齢50歳の彼女の演技にも驚く。ドイツ映画は重いものが多いが、時々引きつけられるものがある。