SIGHT 11月号 「選挙で原発を止める」を読んで分かったこと

福島原発の事故から早3年が過ぎようとしている。脱原発あるいは反原発のムーブメントも大きく盛り上がったが、選挙に全く影響しなかった。領土問題が発生し、多くの党派が脱原発を競い、争点がぼけてしまった感じだ。昨日駅前の本屋で本書を購入。大まかに目を通してみる。田中光彦氏の「国会事故調はなぜ人災であると断言できたのか」は説得力があり、いくつか紹介してみる。この事故調査委員会そのものが異例の事実のみを解明するため(ファクトベース)立ち上げられたものであることが面白い。委員10人中反原発派は藤原氏ら3人だが、完全に通産省、議員、電力会社から独立して調査することが可能だったようだ。
一般に福島の事故の原因は津波であるとされるが、地震そのものであることがかなり踏み込んで書かれている。地震発生時刻は3月11日14時46分、津波到着時刻は、第1波は15時27分、第2波は15時35分と一般に言われているが、これは間違いらしい。この時刻は、沖合1.5kmの波高計に到着した時刻であること、津波の写真の分析から発電所に到着は2分後であること。つまり、津波のために非常用発電機が壊れたのではなく、地震によって壊れたことが証明された。東電の発表は津波原因説であり、事故は人災であるということになるようだ。また、原子炉には「逃がし安全弁(SRV)」というものがあり、結論だけ書くと、現場の作業していた人からの調査で福島第1原発はマーク1型、第2原発は2型のSRVで、2号機ではSRVが作動したため、原子炉内の気圧が下がり、1号機では作動しなかったことが分かった。つまり、第1原発では激しい地震の揺れで配管が損傷して冷却材が漏れて、原子炉の水がなくなり、メルトダウンした可能性が高いことを指摘している。このような重要な事実を東電は一切公表していない。この報告を読んでいて、今回の調査委員会の大きな成果だが、大手マスコミはそれ程大きく報じていないのではないかと思う。
 またマクロ経済学者の小野義康氏の「脱原発は今最も効果の大きい経済政策である」という挑発的な記事も面白い。一般に脱原発政策を行えば、石油などの化石燃料の輸入で電気料金が上昇し、製造業が国際競争に勝てないため、GDPが大幅に減少し、雇用者数も減少すると言われている。しかし、小野氏は電力会社売上合計年間7.5兆円で、仮に1.5倍になるとコスト増は約3兆から4兆円となると計算する。これは日本のGDP500兆円のたった0.75%であり、大した負担ではないとし、これは為替変動で1ドル0.75円上がった程度であり、この程度の変動は日常的であるとする。このマクロ経済の分析は非常にシンプルで分かりやすく妥当性があるではないかと思う。さらに小野氏は再生可能エネルギー事業を立ち上げることで、雇用、生産能力を高めることが可能であり、原発推進脱原発かの2項対立は生み出さないと主張する。まあ我々は電力会社の値上げ通告という脅しに屈服してはならないのだろう。
スケッチは11月の連休に行った京都・南禅寺の黄葉の疎水付近。短い秋だった。