新年初詣とカキの種子散布について

 年末からクマのように冬眠に入り、自宅で読書かレンタルビデオの映画を観ている。元旦は近くの甑岩神社に向かうがすごい人の列だ。以前は照葉樹林の森のひっそりした神社だった。並ぶのが嫌で15分位徒歩で広田神社に向かう。ここも照葉樹林の大きな神社だ。境内に500年頃と1500年頃の西宮の地図が掲示されていて、当時の海岸線が分かる。500年頃は広田神社付近が入り組んだ入り江の海岸線にあり、西宮神社も大阪湾に面している。その後六甲山からの土砂の堆積で海岸線は後退し現在の地形になったようだ。広田神社に向かう途中ぶらぶら歩いていると柿の実がたくさん残っているカキノキDiospyros kaki Thunb. (カキノキ科 カキノキ属)が目につく。 おそらく渋柿だろう。カキノキは本州、四国、九州、朝鮮、中国に生育する落葉の高木。渋いものと甘いものがあり、甘いカキは日本で品種改良された。現在果物として販売されているもののほとんどは外国から導入されたものであり、日本に自生する種から品種改良されたものはカキぐらいしかないらしい。自宅隣の広い空き地には甘い柿が毎年結実し、10月後半にハシブトガラスに食われて、しばらくすると果実はなくなってしまう。若い時は勝手に塀を乗り越えて、果実を食べると甘かったのを覚えている。渋柿も子供の頃学校の帰りに食べると、はじめ一瞬運甘いが喉を通るとき渋いざらっとした味覚だったことを覚えている。植物は鳥や昆虫など植食者から果実を防御するため渋い味であるタンニンをつくることが多い。そのため渋柿は食われずに枝に残っているのだろう。果実は動物に食べられ、種子が排出物として新しい生育地に散布される必要がある。渋柿を品種改良したものが富有柿などの甘い柿だろう。鳥類の採餌による選択圧がかかり、タンニンによる防御が進化したのだろう。しかし、春まで果実が採餌されないのでは、種子は散布されない。おそらく冬の終わりにタンニンが分解され食える状態になるのだろう。これは観察しないと分からないことだが。岡山理科大波田先生のサイトから情報を得たことを付記します。