イギリス映画 Another Year (家族の庭)と The Angels’ Share(天使の分け前)

 最近イギリス映画を観ることか多い。先週神戸シネリーブルでThe Angels'Shareを観る。監督はKen Loach。主演は上目使いのジェームスデイ―ンを思い出すPaul Brannigan。映画初出演とは驚く。スコットランドの冷涼な気候を背景に、スコッチの蒸溜所でvintage whiskyを盗み出し、コレクターに売ろうとする元不良グループを描く。格差社会を生きる不良達の痛快とも言える物語か。村上春樹スコットランド西海岸のアイラ島でスコッチウィスキーの蒸溜所を訪ねる紀行文(写真集とも言える)を書いていたのを思い出す。いかにも寒そうな地方だ。
「Another Year」はレンタルで観る。120分以上の結構長い作品。でも退屈しなかった。物語はロンドン郊外に暮らす中産階級の思慮深い初老の夫婦と彼の庭に集まる同僚、友人たちとの交流を四季の移り変わりとともに描く。監督はMike Leigh。夫婦は快適な家庭を築き、人々はそこに集まり、暖かく迎える。しかし、時に衝突もあり、夫婦は毅然として接する。2人は自らの価値観で生きようとする。これは家族の再生や家族の愛を描いた物語ではない。一人で生きざるをえない現代社会において、新しい共同体を築こうとする物語なのかもしれない。邦題「家族の庭」は少し違和感がある。かつて「社会というものはありません。あるのは個人と家庭だけです」と主張した鉄の女サッチャー首相が最近亡くなった。彼女の功績については賛否両論だろう。冬の寒さを除けば行ってみたいスコットランドである。スケッチは初春の元町付近。数年前下書きを描いて、放置していたものを仕上げた。