爽やかな恋愛映画 フランス映画「ナタリー」とアメリカ映画「ワンダーランドにて」


最近DVDレンタルで観た映画で良かったのはこの2本か.
La Délicatesse(ナタリー)は日本未公開のフランス映画.主演は映画「アメリ」で一躍スターになったAudrey Tautou(オドレー・トトウー)演じるFranois Damiens.彼女はパリのcafeで知り合ったお気に入りの彼と結婚し幸せな毎日を送っていた.しかし,彼が街でジョギング中に交通事故で事故死する.茫然自失の彼女は彼を忘れようと仕事に打ち込み,仕事の出来る女に成長する.社長から信頼され,チームのリーダーとして仕事をこなす.しかし,時が流れても彼のことが忘れられず,恋人はできない.ある日チームの部下の一人のさえないスゥエーデン人の中年男と全くその気がないのに彼女からキスをしてしまう.驚く男は美しい彼女に恋してしまう.彼女もさえない(イケけてない)彼と食事をしたり,演劇に行ったりする.一方彼女に好意を寄せる社長(妻子あり)に高級レストランに食事を誘われ,社長の告白を決然と断る.
 今までフランス映画を結構観てきたが,この映画を観てフランス人男女の幾つかのマナーをはじめて知った.例えば,自分が好意をもっていない相手との食事では最後のデザートを頼まない,ワインではなくビールを飲む,好意を持つ相手としか観劇に行かないなど.職場の仲間は地味でダサい彼が美しく仕事のできる彼女と付き合っていることが信じられない.社長も彼に嫉妬し,彼をスウェーデンの支店に飛ばそうとする.パワハラだ.しかし,彼女は決然と社長に抗議する.自己主張するのはフランス人として当たり前だろうが,かなり強烈だ.またフランス人から見た北欧人は「陰気でしゃべらないダサい」というのも面白い.彼女は誠実で温和な彼に惹かれて恋人になる.キスをしてしまったのは,潜在的に彼に好意をもっていたからだろう.最後は2人で郊外の田園地帯にある死んだ彼の墓と彼女の祖母の家を訪れる.広大なアブラナと麦畑の田園の風景,祖母の家の庭が美しい.最後は暖かい気持で終わる.

 もう1本はあまりアメリカ映画らしくないNext stop Wonderland (ワンダーランドにて).蔦屋で偶々見つける.舞台はボストン.主演はHope Davis 演じる Erin Castleton.彼女はボストンの病院に勤める看護師.映画の冒頭で自然保護運動家である恋人(先日死亡したPhilip Seymour Hoffman,マルキストと彼女の母から揶揄されている)と2人の住むアパート前で大喧嘩して彼は自分からアパートを出て行き,彼女は捨てられる.アパートで一人寂しく過ごすErin.雨の降る窓際で佇む彼女が美しい.今までHope Davisを映画で見ることはなかった.特別美人ではないけれど,この映画では魅力的だ.彼女は毎朝地下鉄で病院に通勤し,同じ列車に水族館でアルバイトしながら大学で海洋生物学を学ぶ35歳の男AlanAlan Gelfant)とすれ違う.彼は一駅先のWonderland駅で下車し海岸にある水族館に向かう.彼女の母は恋人のできない娘にいら立ち,勝手に新聞に恋人募集の広告を出す(これはありえないだろう.そして色々な男たちが彼女に電話し口説こうとする.しかし,Alanと列車で出会いWonderland駅で下車し砂浜の海岸を歩く.美しい映像だ.ところが元彼(Philip Seymour Hoffman)がアパートに戻ってくる.彼女の心はAlanにある.全編心地よいボサノバ,サラボーンのボーカルなどが流れ楽しめる.ボストンの景観も美しい.2本ともほっとする映画だ.
スケッチは夏のAmsの運河.暑かった.写真は女優Hope Davis.