ドイツ ライン川のビーバー保全調査 生態系エンジニアとしてのビーバー





 9月15日Emmerichからライン川上流にある自然環境保全センターの見学と施設の調査船によるライン川沿いの人工湖の調査,観察を行った.この湖でもカナダモElodea2種が侵入し,優占種になっており,船のスクリューにからんで困るようだ.底生動物の採集も行った.ビーバーはこの湖の小さな島と湖岸に生息し,多数の倒木を観察できた.16日ライン川から少し離れた牧場など農村地帯を流れる川をカヌーで下りながら,ビーバーによる両岸の樹木の食害を観察した.晴天ののどかな秋晴れの日,緑の中の川下りは実に爽快だった.オマーンから来た一人の青年は大きな声で歌を歌い続けていた.しかし,カヌーを操作することだけでデータを取ることはできなかったのは少し残念.また2日間夜間ビーバーの行動観察を行ったが,用心深い動物のため行動は観察できなかったが,セットした赤外線カメラに映ったビーバーを見ることはできた.同じ湿地に導入された?ヌートリアが水面を泳ぐのを見た.阪神間でも各地にヌートリアの個体数が増加し,岸辺に容易に観察できるところもある.この両種ともネズミの仲間で,草食性動物だが,ビーバーは主に樹木を食害し,ヌートリア草本を食害することから,両者に競争関係はないということだった.

 2日間のビーバーの食害する樹木調査から理解できたことは,食害により水辺の森林にギャップができること,そのためヤナギなどパイオニアの森林が形成され,生物多様性が維持されるようだ.このようにビーバーは生態系エンジニアとしての役割があるようだ.しかし,カナダではオオカミがビーバーの天敵らしいが,ヨーロッパではヒトが採集しないため天敵不在であり,急激な個体数増加は森林の荒廃の原因になるかもしれないと思った.その他,気になったことは観察した4か所の湿地の周辺の林床,草原はイラクサに覆われていて,その棘のため非常に調査がやりにくいことだった.これはビーバー,ヌートリア,ヒツジなどの家畜が草本類を食害し,棘をもつイラクサが残ってしまったのではないかと思った.