映画「アデル、ブルーは熱い色」原題La vie d'Adele



年末の22日の夜,有馬の温泉旅館にDVDプレイヤーを持ち込み,夕食後個性的な女優2人が演じるフランスの過激な恋愛映画「アデル、ブルーは熱い色」を観た.あどけない顔のアデル・エグザルホプロスと今注目のレア・セドウ共演の映画だ.180分の長編だが,最後まで飽きることなく観ることができた.予想以上の出来だった.二人の関係が特異にも関わらず,二人は物怖じせず爽やかに演じきる.アデルは高校から大学,そして小学校教員までを,相手役のレアはプロの絵描きを目指す学生から,画家として注目されるまでの数年間の2人の関係を描いている.
舞台はフランスの地方都市.2人は偶然道で出会い,そして恋におちる.アデルにとって年上の青い髪の才能のある美術学生のレアは,限りなく素敵な存在だったようだ.食事のシーンが多い.パスタ,生カギなど登場人物が自分でつくり,機会があれば自宅に仲間を招待し,手作りの料理と白ワインで祝う.そこでは個人の自由を重んじるフランス故に周囲は女同士の恋人に暖かい眼差しで見守る.また高校生たちが自然にデモに参加している姿を描いている.日本とは大きな違いだ.       
しかし,当初彼女の高校の同級生たちの彼女への視線は冷たかった.アデルはその批判に反発しながら,自らの恋を貫こうとする.アデルのレアへの過激な愛はすざましい.レアに振られた後の彼女への切々たる告白は見ものだ.しかし,アデルの恋は成就せず,青いワンピースを着てレアの展覧会を後にする彼女は新しい自分の人生を探して街を歩き去るところで終わる.タイトルの「ブルー」はレアの髪を意味するのか,最後のアデルの青いワンピースを意味するのだろうか.R18指定の映画だが,透明感がある.しかし日本上映versionは修正されていて,過激な描写はかなりカットされているようだ.
監督・脚本・製作はアブデラティフ・ケシシュ.この作品で2013年のカンヌ国際映画祭でグランプリであるパルム・ドールを監督,主演2人に贈られた.フランスの若い才能のある2人の女優の登場である.レア・セドウは「ミッドナイトインパリ」「グランドブタペストホテル」などに出演.多くの個性的な役者の中で脇役ながらもその存在感を発揮していた. 監督のアブデラティフ・ケシシュは,繊細で美しい映像から当初比較的若い女性かと思った.しかし,本作official siteによるとチュニジア出身のアラブ人で54歳.遅すぎる世界へのデビューだ.彼そして彼女たちの今後の活躍を期待したい.
宿泊した温泉旅館の露天風呂周辺の六甲山北側の斜面には意外な外来種のニセアブラギリ(トウダイグサ科)が多く目についた.鳥に種子が運ばれたのだろう.