映画 コンチキ Kon-Tiki

ハイエルダールの「コンチキ号漂流記」を読んだのは,小学生の頃だろう.父が買い与えたくれた本で,ドリトル先生シリーズとともに印象に残っている.バルサの木の筏で南アメリカからポリネシアまで横断するという破天荒な実話であり,海上のサメなど魚たちとの出会いや,夜空の星について描写が気に入った記憶がある.今回DVDで観たノルウエイ映画「コンチキ」も美しい海,南アメリカの明るい港町,そして筏の上の5人の濃密な男たちの物語に引き込まれた.主演のハイエルダール役にはいかにも北欧人という長身,金髪で繊細そうな顔立ちのポール・スベーレ・バルハイム・ハーゲンが演じる.ノルウエイに残る妻との冒険を巡る確執も一つのテーマかもしれない.二人は横断成功後離婚する.手元に少年時代に読んだ本が残っているか書棚を見たが残っていない.少し残念だ.少年時代に読んだこれらの本が人間形成にかなり影響していると思う.

現在の人類学の知見では,ポリネシアを最初に発見したのは,東南アジアから海を渡り,東へ向かった人たちであることは立証されている.そのためハイエルダール南アメリカのネイテイブが筏に乗り,ポリネシアを発見したという仮説は,ほぼ否定されたと言える.しかし,彼の壮大な冒険譚は魅力を失わず,映画が製作された.この物語の核心は何だろうか.ひとつは男たちの不安と葛藤であり,自然に対する恐れだろうか.
 監督はヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリの共作.ノルウエイの監督,役者については,ほとんど情報がない.監督の2人は次回のパイレーツ・オブ・カリビアン5(仮題)の監督らしい.