映画「リスボンに誘われて」とリスボンの街並み

今回リスボンに行った一つのきっかけは映画「リスボンに誘われて」を昨年秋ごろ神戸のシネリーブルで観たことだった.今回旅行前にもビデオを借りて再度観てみた.リスボンを舞台にヨーロッパを代表する俳優が出演する映画だ.主演というべきか,進行役と言うべきか,オーストリア,ベルンの高校で国語(古典?)を教える孤独な初老の男(ジエレミー・アイアンズ)が冒頭に登場する.彼は偶々ベルンの橋の上で身投げしようとする若い女性を救うが,彼の前に1冊の本とリスボン行の切符,コートを残して彼女は突然姿を消す.男は彼女を捜そうと,学校の授業を途中で放置し,ヨーロッパを横断する列車に乗りリスボンに向かう.そしてリスボンの坂の上の小さなホテルに宿泊する.このホテル前の坂道は映画に何度も登場し印象に残る.坂の街リスボンらしい光景だ.かなり急な坂だ.神戸で言えば北野坂の上の辺だろうか.彼は本の著者を探しもとめ,著者の妹の女性(シャーロット・ランプリング)に出会い,本の著者が彼女の兄である医師であること,彼は40年前のポルトガル民主化革命の運動家であったことが分かる.そこから物語は40年前の活動の様子と彼の恋人(メラニー・ロラン),仲間を描きながら,一方で今生き残った彼らを訪ねる国語教師を描く.男はメガネを壊したことから女性の眼科医師(マルティナ・ゲデック: ドイツの女優 「幸せのレシピ」)に出会う.最後に二人は本の著者のかつての恋人の女性(レナ・オリンメラニーロランの後年を演じる 「蜘蛛女」 「ナインスゲート」など)に会いためスペインに向かう.ラストはベルンに帰るためリスボンのサンタ・アポローニア駅で二人が別れるところで終わる.寂しい物語ではあるが二人の今後に少し未来を感じる終わり方である.
 旅から帰り,すぐにケーブルテレビでジエレミー・アイアンズ,ジュリエット・ビノッシュの「ダメージ」を観た.ジエレミー・アイアンズはイギリスの国会議員で次は大臣と言われるエリート,ジュリエット・ビノッシュは議員の息子の恋人だ.二人は過激な不倫関係になり,悲劇的な結末を迎える.監督はフランスのルイ・マル.見終って疲れた.内容はともかく,ジエレミー・アイアンズがいかにもイギリス紳士らしく恰好良い.リスボンを舞台にしたこの映画では疲れた孤独な初老の高校教師だ.どちらもはまり役だろう.役者の能力が高いのだ.
 映画では現在,過去ともリスボン市内,テージョ川を渡るフエリーの上などがロケ地にとなっている.映画は夏の太陽光線の強い季節ではない時期に撮影され,落ち着いた雰囲気がある.夏のリスボンは,南欧らしい陽気な雰囲気だったが,また春か秋に訪れると良いかもしれない.
スケッチはリスボン市内の丘の上からテージョ川を眺めたところ,暑い昼下がりだった.